俺は知りたいんだ。走るってどういうことなのか―
寛政大学4年の清瀬灰二(ハイジ)は肌寒い三月、
類まれな「走り」で夜道を駆け抜けていく蔵原走(カケル)に出くわし、
下宿の竹青荘(通称・アオタケ)に半ば強引に住まわせる。
ハイジには「夢と野望」があった。高校時代の怪我による挫折。
でももう一度、走りたい、駅伝の最高峰・箱根駅伝に出て、
自分の追求する走りを見せたい。その「夢と野望」を「現実」にするにはあと一年しかない。
そしていま強力な牽引者が彼の目の前に現れたのだ。
竹青荘は特異な才能に恵まれた男子学生の巣窟だった。
寮生のため炊事をこなすハイジをはじめに、大学に5年在籍している25歳ヘビースモーカーの
ニコチャン先輩(平田彰宏)、双子の兄弟・ジョージ(城 次郎)とジョータ(城 太郎)、
留学生のムサ(ムサ・カマラ)、実家が山奥のど田舎にある神童(杉山高志)、
司法試験に合格済の音楽フリーク・ユキ(岩倉雪彦)、クイズ番組好きのキング(坂口洋平)、
金と時間のすべてを漫画に捧げる王子(柏崎 茜)...。そんな個性豊かな面々が、その竹青荘が実は
「寛政大学陸上競技部錬成所」であることなど知らずに共同生活を送っていた。
ハイジは彼らを脅しすかし、奮い立たせ、「箱根」に挑む。
たった十人で。蔵原の屈折や過去、住人の身体能力と精神力の限界など、
壁と障害が立ちはだかるなか、果たして彼らは「あの山」の頂きにたどりつけるのか―。
「走りとは力だ。スピードではなく、一人のままでだれかとつながれる強さだ。」